注目の中高年スタートアップ
さて、今回は中高年層のスタートアップ転職にスポットを当ててみました。
読者の皆さん、こんな悩みはありませんでしょうか?
「今の職場での役割は安定しているが、やりがいが薄れてきた」
「転職を考えてはいるが、年収が下がるかもしれないと不安だ」
「年齢的にスタートアップ転職なんて無理じゃないか?」
しかし、ここ数年でこうした常識が大きく変わりつつあります。
実は近年、中高年層のスタートアップ転職が注目を集めているのです。
その背景には、スタートアップの賃金が上昇していることが挙げられます。
日経新聞の記事によると、スタートアップの待遇改善により、中高年層がこれまでのキャリアで培った経験を活かし、新たなチャレンジを求めようとする動きが広がっています。
まず、現状を見ていきましょう。
エン・ジャパンが運営する転職サイトなどでの調査では、40代以上のミドルエイジでは、成長を目指して資金調達を急ぐ新進気鋭のスタートアップへの転職件数は、24年の1~7月実績では、2年前の同期比において78%も増加しています。
これは、30代の61%、20代の53%を大きく上回っています。
また、40代以上でも特に50代は転職者数が過去6年で4倍にも膨れ上がっている現状があります。
以前のスタートアップでは、転職によって年収が下がってしまうケースが多かったため、転職先としては選びにくいところでした。
しかし、状況は急速に変化し、前述のエン・ジャパンの調査では、スタートアップに転職した40代以上の人の年収は、23年で平均758万円となっていて、全転職先の平均年収を8%上回った結果が出ています。
また、転職後に年収が増えたという人の割合は50%で、19年調査の22%から大幅に増加していることが転職先の選択肢として確立されつつある証左ではないでしょうか。
それでは、ここからは中高年の労働者目線を中心に据えてスタートアップ転職の現状と課題などにスポットを当てていきたいと思います。
まず、中高年の転職を促す背景としてはどのようなものが考えられるのでしょうか。
先に触れたように、スタートアップの賃金上昇は、中高年層の転職増加の大きな要因となっているといえます。
スタートアップはこれまで新進気鋭の若手中心の職場としてのイメージが強かったものの、現在では成熟したスキルセットを持つ中高年層を積極的に採用する傾向が強まっています。
加えて、次の2点の理由からも中高年層の転職が進んでいるといえます。
まずは、新しいことに挑戦し自分の経験・スキルを活かせる場として注目されているといったスタートアップへの期待感です。
そしてもうひとつは、従来の企業が取り入れている役職定年や評価制度の停滞から、中高年層を中心としてそれを打破するために新興企業という新たな環境を求める傾向を持ち始めてきたということです。
では、スタートアップへの転職で中高年層が感じている課題や不安はないのでしょうか。
少し触れてみたいと思います。
やはり誰しも新しい環境へ身を委ねる際には、リスクマネジメントなどを考えることは当然だと言えます。
特にスタートアップへの転職において、中高年層は若年層より家庭や退職後の人生といったものを背負っていることから、多くの転職組においては不安を抱くことがあるでしょう。
不安を抱かないという方がむしろレアなケースだと言えます。
スタートアップとは、先進的な技術(テクノロジー)や斬新なアイデアを強みにして、ゼロから市場やビジネスモデル創出に挑戦する成長速度の早い企業ですので、これまで明確な職務範囲と責任分担の中で育った中高年層にとって、役割が流動的で責任の不明確さがあるこれらの企業の環境は、未経験ということもあって不安要素として上がって来るでしょう。
スタートアップでは状況に応じた柔軟な対応が求められるため、従来の固定的な働き方に慣れている方にはプレッシャーとなり、負担と感じてしまう場合も出てくるでしょう。
職場環境が変われば、自分自身も現状からの脱皮する気構えが必要かも知れませんね。
課題や不安要素について触れましたが、それでは、特に転職に際して重要なポイントと言える新旧の職場の違いを埋めるには、どういったことに注意をしていかなければいけないのでしょうか。
スタートアップと中高年層が相互に成功するためには、次のことについて配慮していく必要があります。
まず企業側の取り組みとしては、中高年層が今までに培ったスキルを十分に発揮できるよう、明確で具体的な役割や目標を設定することが重要だと言えるでしょう。
他社の成功事例を参考にして、シニア層が馴染みやすい企業文化や研修体制を整えることが求められます。
そして、中高年層の心構えとして押さえておきたいところとしては、スタートアップでは受動的な姿勢ではなく、積極的に自ら提案を行いチームに貢献する姿勢が期待されていることを理解しておくことです。
更に、ベンチャー特有のスピード感や変化への柔軟な働き方ができる対応力を高めることも必要だと言えます。
実例を挙げて、その効果を覗いて見ましょう!
あるスタートアップ企業では、中高年層を対象に業務委託として契約をして、短期プロジェクトに参画・関与させることで、信頼関係の構築をスタートしたといった事例がありました。
また、シニア世代の知見や経験を「部分的に共有する」といったことで、雇用リスクを抑えながら即戦力としての活用を実現しているケースもあります。
双方の信頼関係が強まった後に、企業の方向性や方針に深く関与する契約に移行するケースも見られています。
更に、別の企業では、中高年層に若手社員のメンターとしての役割を与えられているケースもあります。
経験を共有しながら協力体制を見据え、柔軟なコミュニケーションを重視しつつ、上下関係を超えた「共創」の姿勢を育む努力が進められています。
特に、社員の離職に悩む企業やリモートワークを導入している企業においては、直接のリーダーや経営陣には相談しにくい内容を気軽に話す聞き役としての役割や、中高年層の成功体験だけでなく失敗経験を学ぶOJTの指導当事者としての役割にも期待が寄せられています。
以上のようなケースを見ていくと、中高年層のスタートアップ転職が増加する中、企業側と個人側の相互理解が欠かせないことが大変重要であることは明らかです。
企業は受け入れ体制を整備して迎え入れる体制を整え、中高年層は柔軟性を持って新たな環境に飛び込む決意をすることで、両者にとってメリットのある形が実現できると言えるでしょう。
ある方は、中高年の転職組の経験を若手社員と共有することで、組織全体のスキル向上につながったと言います。
また、役割を明確化したことで、シニア層が安心して働きながらも、結果を出す前向きな仕組みが生まれました。
日本社会全体でキャリアの多様性が求められる中、このような動きは今後更に社会から求められることが加速することでしょう。
このメルマガでは、中高年の働く皆さんに、スタートアップ転職を勧めているわけではありません。
ただ、過去の年功序列が是とされていた時代が社会の流れと共に変わり、年収が増える可能性やモチベーションが高まる働き方としてのスタートアップ転職という選択肢が一枚加わったことをお知らせするための配信だとご理解ください。
このメルマガがトリガーとなって、スタートアップ転職に興味を持っていただくことで、少しでも皆さんのQOLの向上へつながり、ひいては人生のwell-beingを叶えていただくステップになれば幸いと考えています。
あなたの次のキャリアに、スタートアップを選択肢のひとつとして検討してみてはいかがでしょうか?(ま)