孤独感を解消しましょう!

さて、今回は健康寿命を削らないでの第3弾として、「孤独感」についてのお話しをしたいと思います。

人は本能的なそれ自身の個体としてだけでなく、他者との関係や集団への所属を通じて自己を形づくる「社会的存在」としての社会性と呼べる性質をもっていると理解されています。
これは、具体的なものとして言語・他者との協力・役割分担・規範の共有などに顕著に現れているといえます。
今回は、人が持つ「社会性」へスポットを当てて、特にメンタル面における健康寿命への影響を深掘りしてみたいと思います。

人と会わない生活そのものが必ずしも悪いわけではありませんが、長期にわたって孤独感や「社会から切り離された」と感じる状態が続いてしまうと、うつ症状や生活習慣病リスクの上昇などの健康への悪影響が報告されています。
またその一方では、基本的には一人でいることを好みつつ、趣味やオンライン交流などを通して人との交流をしていくことで満足感を得ている場合は、必ずしも心の病気になりやすいとは限らないとされています。

筑波大学等の研究から、他者から見て社会的に孤立している客観的な状態は、孤独感や抑うつ症状とほとんど関連がない一方で、自分自身は社会的に孤立していると主観的に感じることや孤独感が、抑うつ症状と関連することが分かりました。
この部分は本研究の肝というべきところで、特に、社会的に孤立していると自覚し、孤独を感じることが、抑うつ症状をさらに高めることが明らかになりました。
言い回しが分かりづらい表現で恐縮ですが、他人から本人を見たとき「この人は社会的に孤立している」と見えても、本人は孤独感や抑うつ症状とほとんど関連がない状態にあります。
それと比べて本人が社会的に孤立していると認識している場合は、本人は社会的孤立を感じるとともに、抑うつ症状となって気分が落ち込んで、思考、行動、感情、幸福感に影響が出ている状況に陥っていることがあるのです。
「人とのつながりが少ない」状態の社会的孤立と、主観的に感じる否定的な感情の孤独感は、いずれも心身に悪影響を及ぼします。
一方で、社会的孤立の状態であっても、孤独を感じることなく健康的に過ごすことができている人々もいます。
しかしこれまでは、社会的孤立や孤独感が、メンタルヘルスに影響を与えるプロセスついては、総合的な検討はほとんど行われていませんでした。
この研究では、社会的に孤立している客観的状態そのものは孤独感や抑うつ症状とほとんど関連がなく、社会的に孤立していると主観的に感じることや孤独感が、抑うつ症状と関連することを見いだしました。
特に、社会的に孤立していると当人が認知していて、そこに孤独を感じることによって、抑うつ症状がさらに高まってしまうことが分かりました。
この研究結果は、社会的孤立の状態について、当人がどのように感じているかに着目することが重要であり、社会的孤立の状態にある人々に支援をする際には、人とのつながりを増やすだけではなく、個人の認識や考え、感情に焦点を当てる必要性を示しているといえます。
筑波大学などの研究グループは、社会的に孤立していても社会生活や健康を維持し、個々が充実した生活を送ることができる健康な「個立」社会を創ることを目標にして活動をされています。
社会的孤立や孤独感が、抑うつ症状にどのような影響を及ぼすのかについて知ることは、社会的孤立や孤独感を予防するための新たな方策の開発につながると期待されています。

ここまで筑波大学等の研究を中心に深掘りして、社会的に孤立していると当人が主観的に感じる孤独感が、抑うつ症状と関連することの理解が出来たと思います。
ではここからは人と会わない生活におけるメリットや、反対に健康面におけるリスクについても見ていきましょう。
まずは、人と会わない生活のメリットについてです。

人と会わない生活のメリットには、次のようなことが挙げられます。
◯自分のペースで生活が過ごせます
◯刺激や人間関係のストレスが減ります
◯趣味や学習に集中しやすくなります

次に健康面でのリスクはどうでしょうか。
◯社会的孤立や孤独感は、抑うつ症状の増加と関連する研究があります
◯高齢者では、人とほとんど会わない人は、生活習慣病や認知症などのリ
 スクが高い傾向が報告されています
◯孤独や孤立は、喫煙と同程度の健康への悪影響があるとする海外研究が
 紹介されています

「孤立」と「孤独感」ですが、よく似たもののように思えますが、違いがあります。
客観的に人との付き合いが少ない状態(社会的孤立)と、当人が主観的に感じる寂しさ(孤独感)は別物です。
この研究では、「人と会っていないこと」そのものより、「孤立していると自覚し、孤独だと感じること」が抑うつと強く関連すると報告されているところに注目しましょう。
また、一人でいるのが好きな人の場合を見てみると、厚生労働省の若者向けの情報では、友達の多さと心の健康は直結せず、友達が多ければ多いほど比例して健康が保たれるようなことはありません。
一人でいるのが好きでも、それだけで心の病気になりやすいとは言えないと説明されています。
次のような場合は、「静かな生活スタイル」として考えられ、問題ないケースも多いと考えられています。
◯一人の時間で充実感を得ている
◯必要なときに相談できる相手がいる
◯仕事や学業など社会との接点がある

そして、メンタルヘルスへのリスクを下げるための工夫、所謂メンタルヘルスへのリスクマネジメントとして、次のようなことに注意することが良いでしょう。
1 他人との最低限のつながりを保つ
メールやチャット、オンラインコミュニティなど、顔を合わせなくてもよい形で交流する。
2 生活リズムと健康管理
睡眠・食事・運動を意識し、孤食が続く場合は栄養バランスに注意する。
3 孤独感が強いときは支援を利用
現在日本においては、孤独・孤立対策として相談窓口や支援制度が整備されつつあります。
内閣府や厚生労働省のサイトからは公的な相談先を確認できますので、孤独感を強く感じて対処しきれない方は、利用されるのも一考です。
この支援サイトとのやり取りそのものが他人とのコミュニケーションと合致しますので、大いに利用すべき部分ではないかと感じています。
特にひとつめの「他人との最低限のつながりを保つ」のところでは、他者との会話によるコミュニケーションが維持されれば、痴呆症などの脳の急速な衰えにブレーキを掛けることが出来ます。
そして会話の中で笑うことによりアンチエイジングへの道へと繋がっていきます。

冒頭にお伝えしたとおり、人は自身の個体としてだけでなく、他者との関係や集団への所属を通じて自己を形づくる「社会的存在」としての社会性と呼べる性質をもっていますので、前述した3つのリスクマネジメントを駆使していただければと思います。
ただ、3つのリスクマネジメントを駆使したとしても、打出の小槌のように振れば直ぐに結果に繋がり、心身共に健康体を得られるようなことはありません。
本人の意識が3つのリスクマネジメントをしっかりと理解した上で、一朝一夕には結果は出ないことを念頭に置いて、焦らずコツコツと改善策を行使していただければと考えています。
牛歩かも知れませんが、少しずつでも改善へ向けてQOLの向上を目指して行くことが、メンタルを整えることのできる一番の早道ということも考えられます。(ま)