健康寿命を削るシリーズ エコノミークラス症候群

さて、今回は健康寿命を削らないでといった大きなテーマでの2つめになる「エコノミークラス症候群」の話題です。

私たちは自分自身の健康維持のために、普段の生活の中に潜む健康を害する恐れのある行為を良く知ることが必要といえます。
今回は「エコノミー症候群」に関する知識について深掘りしてみたいと思います。

世間でよく言われる「エコノミークラス症候群」というのは、「深部静脈血栓症(DVT)」と「肺血栓塞栓症(PE)」の総称のことです。
なんだか難しそうな言葉ですが、簡単に言えば、食事や水分を十分に取らない状態で、その名のとおり飛行機のエコノミークラスの席や車などの狭い座席に長時間座っていて足を動かさないと、血行不良が起こり血液が固まりやすくなります。
その結果、血の固まり(血栓)が血管の中を流れ、肺に詰まって肺塞栓などを誘発する恐れがあります。
大切な命に関係してくる恐ろしい病気でもあります。
この「エコノミークラス症候群」を予防するためには、次のような行動を取るのが良いと言われています。
①ときどき、軽い体操やストレッチ運動を行います
② 十分な水分をこまめに取ります
③アルコールを控え、喫煙者は血管収縮に繋がるためできれば禁煙します
④ゆったりとした服装をし、腰のベルトをきつく締めません
⑤かかとの上げ下ろし運動をしたりふくらはぎを軽くもんだりします
⑥眠るときは足をあげます

「エコノミークラス症候群」の引き金となるのは、脚の静脈内にできる血液の塊「血栓」です。
国立循環器病研究センター循環器病情報サービスによれば、狭い乗り物に座るだけが原因では無く、旅行以外でも例えば同じ体勢を取り続けるオフィスでも、発症する危険性は考えられます。
仕事などで椅子に長時間座るケースなど、ずっと同じ姿勢でいると、脚の血流が滞って、血が凝固し、血栓になるケースがあるということです。
この血栓が血液の流れによって肺まで流れ着き、肺の動脈を詰まらせてしまう恐れがあるのです。
また、厚生労働省からは災害が発生した地域に対して、被災者の避難生活が長期化する中で、避難所や自動車等で生活されている被災者の健康に関して「エコノミークラス症候群」対策が取り上げられています。
厚生労働省は、避難所の運営、運営支援に携わる場合、避難所等を巡回し健康管理等の業務に携わる場合、それらの担当者は避難所生活を過ごされる方々の健康管理を行うために決められたガイドラインを避難者等に配布して、歩行やこまめな水分補給等を勧めるなど、「エコノミークラス症候群」に対する注意喚起とその予防方法・対策について支援をしています。

「エコノミークラス症候群」を発症すると、息苦しさを感じるケースが多いといいます。
また、肺動脈の血液がせき止められることで、息を吸う時に胸が痛くなったり、心臓から流れる血液量が減って、血圧が低下することによる失神やショック症状の恐れもあるといいます。
症状が重い場合は、突然死することもあるようです。
「エコノミークラス症候群」には初期症状があります。
例えば、呼吸困難、胸の痛み、不安感、冷や汗、失神、動悸、発熱、咳、血痰などが挙げられます。
特に多いのは呼吸困難で、73%の患者が1回以上の発作を起こしています。
また、53%が胸の痛みを訴えており、さらに27%は失神するケースもあります。

それでは「エコノミークラス症候群」で苦しまないためには、どうすれば良いのかを見ていきましょう。
厚生労働省の「エコノミークラス症候群」の予防のためのというリーフレットによると、次のような具体的な方策が列記されています。先ほどの予防項目とほぼ同じ方策です、大事なことですので再度復唱してみてくださいね。
① ときどき、軽い体操やストレッチ運動を行う
② 十分にこまめに水分を取る
③ アルコールを控え、できれば禁煙する
④ ゆったりとした服装をし、ベルトをきつく締めない
⑤ かかとの上げ下ろし運動をしたりふくらはぎを軽くもんだりする
⑥ 眠るときは足をあげる
どれも簡単に出来ますので、覚えておいていただければと思います。
では、特に上記予防法の⑤にあった「運動」に注目してみましょう。
日本循環器学会は、2016年の熊本地震で被災した人に向けて発表した「エコノミークラス症候群」の予防法として、下肢の運動を挙げています。
脚を動かさないと、ふくらはぎの筋肉のポンプ作用が弱まり、血液の流れが遅くなり、血液が溜まりやすくなるとのことです。
とはいえ、オフィスで運動はなかなかできないものです。
座ったままで行える対策としては、足首のストレッチや、ふくらはぎのマッサージなどがあります。
宮城県成人病予防協会によれば、足首を回したり、つま先を伸ばしたり立てたりする動きを5~10回程度繰り返し行い、両手でふくらはぎを揉みほぐすようにしながら、下から上、足首から膝に向かって数回さすることでも十分予防効果があるといいます。
また、水分のこまめな補給も大事です。
日本循環器学会によれば、水分が不足すると、血液がドロドロになって、固まりやすくなるそうです。
その他の対策としては、こまめに歩いたりストレッチの時間をとったりするのが難しい場合は、弾性ストッキング(または圧迫ストッキング)と呼ばれる特殊な靴下を着用するという方法もあります。
これは太腿、ふくらはぎ、足首と部位ごとで着圧を変えることによって、足全体の血行をサポートするものです。
東日本大震災や熊本地震の際には、日本静脈学会に所属する医療品メーカーによって、同じ姿勢でいることの多い避難所や車中泊などの被災者を中心に、支援物資として配布されました。
ストッキングという名称ですが、男性用の製品も発売されています。
長めの靴下のようなデザインのものもあり、オフィスで着用しても問題ないでしょう。
血管をはじめとする循環器は、最もストレスを受けやすい臓器のひとつだといわれています。
座りっぱなしでいることが多く、かつ仕事でストレスを感じることも多いオフィスでは、「エコノミークラス症候群」のリスクは軽視できません。
サラリーマンなどは、毎日の生活の一部を成すオフィスでの発症は、「エコノミークラス症候群」を軽視してしまうとどこでも・誰でもが発症してしまうリスクを負うことにも繋がりかねません。
外回りではなく内勤を業務のメインとする方は、万が一のことが起こらないよう、まずは足首のストレッチから始めてはいかがでしょうか。

「エコノミークラス症候群」は、食事や水分を十分に取らない状態で、狭い空間に長時間座っていて足を動かさないと、血行不良が起こり血液が固まりやすくなり、万一血栓が出来てしまうと最悪の事態も想定できる恐ろしい病態です。
特に高齢者、がん患者、既往歴のある人は重症化しやすく、入院期間が長引いたり後遺症が残ることもあります。
治療後でも、慢性的な足の腫れや色素沈着、潰瘍などの皮膚症状が長期にわたり続くことがあります。
このようなことから、「エコノミークラス症候群」を軽視してしまえば、私たちのQOLの低下へ繋がる可能性も見え隠れします。
「エコノミークラス症候群」の予防については、前述した厚生労働省が出している資料に簡単に出来る具体的な方策が示されていますので、「エコノミークラス症候群」に陥る可能性のあるシチュエーションになれば、是非とも予防に努めていただき、QOLの低下へブレーキを掛けていただければ幸いです。
8月18日配信分では、健康寿命を削るシリーズ第3弾として孤独感が健康に及ぼす影響についてのお話しをしたいと思います。(ま)