健康寿命を削るシリーズ 夜更かし
さて、今回は健康寿命を削らないでといった大きなテーマの中で、睡眠不足による弊害についての話題です。
夜更かしの習慣がどうしても抜けないって方はおられますか?
この習慣は、そのままなすがままに放置しておくと睡眠不足から認知症への道筋へ進むリスクがあります。
では、この夜更かし習慣によって、健康寿命が少しずつ削られ、結果的に認知症リスクが大きくなることを防ぐため、まず夜更かしの正体、夜更かしが続く理由を明らかにしていきたいと思います。
夜更かしが続く理由としては、次の4項目が挙げられます。
◯日中に自分の時間が少なく「夜こそ自分の自由時間」になっている
◯スマホや動画がやめどきのない設計になっている
◯眠いのに「今終わらせたい・今しかない」と感じてしまっている
◯たまの夜更かしが習慣になり、体内時計が後ろにずれてしまっている
以上4項目のように、「意思が弱いから」と言った理由ではなく、環境と習慣の積み重ねによって夜更かしが起きていることが多いのです。
長く続く夜更かしは、少しずつ体にも心にも負担が溜まっていきますが、ここからは具体的には身体に対してどういった影響を及ぼしていくのかを深掘りしていきたいと思います。
まずは、脳とメンタルへの影響に関して見ていきましょう。
脳とメンタルへの影響については、集中力や判断力の低下につながることから、仕事や勉強のミスが増えやすくなることが挙げられます。
イライラしやすくなったり、気分が落ち込みやすくなったりして、メンタルの不調のリスクが上がるとされています。
徹夜や慢性的な睡眠不足が続くと、記憶力も落ちやすくなります。
また、体への長期的なリスクにも触れてみましょう。
生活リズムの乱れは、自律神経のバランスを崩しやすく、動悸やだるさ、頭痛などの不調につながることがあります。
慢性的な睡眠不足は、肥満、糖尿病、高血圧など生活習慣病のリスクを高めるという研究報告が数多くあります。
免疫力が下がり、風邪をひきやすくなったり、元通りに回復するのに時間がかかりやすくなります。
このように、長期的な視点において夜更かしを続けることを見てみると、健康リスクを増大させる大きな要因になることは間違いないようです。
続いて、ホルモンバランスへの影響はどうでしょうか。
夜更かしで睡眠時間が短くなると、成長ホルモンが十分に分泌されず、肌の状態が悪くなったり、疲れが取れにくくなります。
食欲を調整するホルモンが乱れ、甘いものや高カロリーなものを欲しやすくなり、太りやすくなる傾向が出て来ます。
また、明らかにすぐに出やすいサインとしては、朝起きるのが辛く、休日には長時間寝てしまったり、日中に強い眠気があって、ぼーっとする時間が増えたりします。
更に、肌荒れ、目の下のクマ、頭が重い感じが続いたりします。
このあたりの症状が続いているならば、「体がそろそろ限界サインを出している」と考えて、リスク軽減のために睡眠を優先した方が安心です。
夜更かしが続くと「頭のキレ」が心配になります。
多くの場合は対処すれば回復しますが、夜更かしの期間と症状の深刻さによってはその回復状況が変わることもあります。
ここからは、夜更かしによって落ち込んだ健康状態を回復するためのヒントを見てみることにしましょう。
まず、一時的な低下についての回復ヒントです。
一晩〜数日の夜更かしで起きる「ぼーっとする」「ミスが増える」といった認知機能低下は、きちんと眠ればかなり元に戻ります。
24時間起き続けたあとでも、8〜10時間しっかり眠ると主な機能はほぼ回復すると報告されています。
昼寝や短時間の仮眠だけでも、集中力や記憶力などが一時的に改善することが確認されています。
このように一時的な低下は結構短期間で回復するしますが、慢性的な夜更かしで痛んだ体は中々しぶとく、回復には時間がかかるようです。
寝不足が何週間も続くと「睡眠負債(日々の睡眠不足が借金のように積み重なり、心身に悪影響を及ぼす恐れのある状態のこと)」が溜まり、1〜2日たっぷり寝ただけでは完全には解消されにくいとされています。
夜更かし期間が長いほど、生活のリズムと認知機能の両方を整えるためには、数日〜数週間の期間をかけて少しずつ睡眠時間と就寝時刻を正常な生活パターンへと戻す必要があります。
ここで注意すべきところは、世の中にはもともと夜にパフォーマンスが上がる「夜型」の人もいるので、生活の中で十分な睡眠時間が確保されていれば、認知機能自体は高く保たれるという研究もあります。
問題になりやすいのは「夜型なのに、朝型の一般的な社会リズムに無理無理合わせるため、常に寝不足だ」という状態ですので、体質としての「夜型」は別問題と言えます。
では、回復を早めるコツやヒントには、どういったものがあるのかいくつか覗いて見ましょう。
◯数日かけて就寝時刻を15〜30分ずつ前倒しする
◯平日も休日も起きる時間を大きくずらさない
◯朝に日光を浴びて体内時計をリセットする
◯日中に短めの昼寝を取り入れて、認知機能を補う
長く続いた夜更かしの回復は一朝一夕で改善することは難しいですが、前述した回復を早めるコツやヒントを使って、多くの人の場合は「睡眠時間を確保して生活リズムを整える」ことが出来るので、少しずつ認知機能は回復していきます。
ここまで夜更かしを原因とした体と心への悪影響と改善方法について触れてきましたが、ここからは何かにつけて注目されている認知症と睡眠との関係について深掘りしていきたいと思います。
前段の回復のヒントの中で触れた睡眠負債という日々の睡眠不足が借金のように積み重なり、心身に悪影響を及ぼす恐れのある状態と認知症との関係は、ここ数年かなり研究が進んでいるテーマです。
「睡眠負債があると認知症リスクが高まりうる」という流れの研究結果が増えています。
特に、短すぎる睡眠や、質の悪い睡眠、睡眠障害は、将来の認知症やその前段階のMCI(軽度認知障害)リスクと関連すると報告されています。
この中の睡眠障害は、昼間は活動して夜間は眠るということができなくなり、日常生活に影響が出ている状態の総称を言います。
睡眠障害には、眠れないことで日常生活に支障が出る「不眠症」や、眠っている間に呼吸に異常が出るもので、有名な睡眠時無呼吸症候群に代表される「睡眠関連呼吸障害」、夜間に十分に眠ったのにもかかわらず、昼間に眠くなり居眠りをしてしまう「中枢性過眠症」、体内時計の働きがうまくいかなくなることで、望ましいタイミングで眠ったり起きたりできなく
なる「概日リズム睡眠・覚醒障害」、眠っているのにもかかわらず、異常な行動をする「睡眠時随伴症」などが含まれます。
日本人では約5人に1人が睡眠に関して悩んでいるといわれており、女性の方が多いとされています。
中でも「不眠症」がもっとも多いと言われています。
原因は色々ありますが、不眠症の多くは加齢が原因になるほか、飲み物からのカフェインの摂取、寝る前の飲酒や喫煙などの生活習慣が影響する場合もあります。
完全に因果関係が証明されたわけではないものの、「よく眠ることは認知症予防の一つ」ということが専門機関のスタンスに近い考え方です。
では睡眠不足が、どうして認知症のリスクを上げる原因と考えられるのでしょうか。
睡眠中は脳の老廃物を洗い流す仕組みがよく働くとされていて、この仕組みの中でアルツハイマー病に関係する「アミロイドβ」なども処理されると考えられていますので、当然睡眠不足はこの脳の老廃物処理の仕組みを阻害し、アルツハイマー病の発症へと繋がってしまいます。
また睡眠不足が続くと、体の中の炎症反応が高まり、神経を傷つけやすくなる可能性があります。
不適切な睡眠時間や質の悪さは、認知症の前段階であるMCIのリスク要因としても挙げられています。
具体的に不適切な睡眠時間とリスクの目安が国立長寿医療研究センターの資料で示されています。
◯5時間未満の短すぎる睡眠
◯8時間以上の長すぎる睡眠
このどちらも将来の認知症発症リスクが高いというデータが紹介されていますが、短時間の睡眠不足の指摘は理解できますが、長すぎる睡眠も認知症に繋がる可能性があることにビックリですね。
専門機関は、認知症予防として次のような生活を勧めています。
◯自分に合った睡眠時間を確保して、睡眠負債を溜めないこと
◯規則正しい生活リズムと、朝の光を浴びること、適度な運動をすること
◯糖尿病や高血圧など他のリスク因子も一緒に整えること
色々な要因があり、複雑に絡み合っている場合があるため、認知症は完全に防げるわけではありませんが、「よく眠る・よく動く」は、今わかっている中で現実的かつ効果が期待できる対策とされています。
読者の皆さんは、日常生活における夜更かしの習慣を改善して、「よく眠る・よく動く」で認知症予防を行いながら、QOL向上に繋げていただければ幸いです。
次回は、エコノミークラス症候群のお話しをしたいと思います。(ま)

