ユニバーサルデザインを知ろう!

さて、今回はユニバーサルデザインのお話しです。

ユニバーサルデザインとは、年齢や性別、国籍、障害の有無などに関わらず、誰もが使いやすいようにデザインされた製品やサービスなどのことを指します。
ふだん何気なく通りすぎている、自動ドアや音声案内が流れる横断歩道なども、ユニバーサルデザインの一例です。
ユニバーサルデザインは、文化、言語、国籍、年齢、性別の違いやハンディキャップの有無にかかわらず、できるだけ多くの人々に使いやすい製品や環境をデザインすることを目指しています。
デザイン対象を障がい者や高齢者に限定していない点が「バリアフリー」とは異なるといえます。
バリアフリーが、さまざまな利用者を考慮せずにつくってしまった結果として、障壁(バリア)が生じてしまったことへの反省から、「最初から誰にとっても使いやすいデザインで」解消するという考えが反映されていきました。
欧米では、バリアフリーがかなり進んだ後にユニバーサルデザインの考え方が提唱されたため、その違いは理解されやすかったといえます。
しかしながら、日本の国内においては「バリアフリー」の理解が不十分なうちに「ユニバーサルデザイン」の考えが紹介されてしまったため、両者はしばしば混同されており、必ずしも正しく理解されているとは言えない点もあります。
ただ、現在SDGsの中で「誰も取り残さない」と提唱されている考え方は、ユニバーサルデザインの基本的な考えに近い概念といえるでしょう。

さて、ユニバーサルデザインの7原則というものがありますのでご紹介しましょう。

  1. どんな人でも公平に使えること。
  2. 使う上での柔軟性があること。
  3. 使い方が簡単で分かりやすい。
  4. 必要な情報がすぐに分かること。
  5. 簡単なミスが危険につながらないこと。
  6. 身体への過度な負担を必要としないこと。
  7. 利用のための十分な大きさと空間が確保されていること。
    なるほどと理解できるところが、多々ありますね!

それでは、実際にあるユニバーサルデザインの具体例をご紹介しましょう。
◯病院等の医療用施設向けに開発されたが、多くの人が心地よいと感じたために普及したシャワートイレ。
◯適切にデザインされた身体的負担の少ないスロープと階段の組み合わせ。
状況に応じてエレベーターやエスカレーターとも組み合わせる。
◯絵文字(ピクトグラム)による視覚的・直感的な情報伝達と音声や音響、触覚による情報伝達の組み合わせ。
◯ユーザーが自由に選択できる、多様な入力および出力装置(キーボード、マウス、トラックパッド、ジェスチャー、音声など)とそれらの接続、使用ができるプラットフォームとしてのパソコンやスマホ等のハードとソフト。
◯視認性やユーザーの感情に与える効果に配慮した配色計画。
◯複雑なマニュアルがなくても、直感的に使用できる製品のデザイン。
◯読みやすさ、視認性を向上させる目的で開発したフォント

また、ユニバーサルデザインの世界での市場規模は、2020年現在でなんと40兆円を超えているということです。

それでは、ユニバーサルデザインをもう少し身近に感じていただくため、「衣のユニバーサルデザイン」を例に深掘りしていきましょう。
「衣のユニバーサルデザイン(以下UD)」とは、衣服などができるだけ多くの人に受け入れられ、楽しまれるためのデザインです。
衣のUDに必要な要素は多様ですが、審美性、機能性、有用性、社会性、安全性、視認性などが重要であるといえるでしょう。

<審美性:時代感覚やおしゃれ感、ファッション性を大切にしましょう>
年齢や障害にかかわらず、おしゃれを楽しめる魅力的なデザイン、素材、色、柄であることが重要です。
高齢者だから地味に、という固定的な考えではなく、むしろ「孫とお揃い、色違い」といった感覚で、楽しみながら着こなせるのがよりユニバーサルであるといえるでしょう。

<機能性:服のサイズや体形に不満を持つユーザーや車いす利用者などに配慮しましょう>
年齢が変わってもファッションを楽しめるよう、多様なサイズを取り揃えましょう。
5歳と25歳では当然のことながら体格が変わりますが、大人になってからでも、25歳、45歳、そして65歳と加齢に伴って、骨格、体形、筋肉、脂肪のつき方等が変わるので、それに対応した適切なパターンと多様な選択肢が求められます。
着物や浴衣は、その柔軟性・可変性という点では、ユニバーサルといえるでしょう。
また、車いす利用者のスラックスは後ろ股上を深くして座りやすくしたり、ジャケットなどの前丈を短くして座ってもかっこよく見えるようにするのも良いですね。

<有用性:身体機能の低下やサイズ調整などに配慮しましょう>
関節が動かしにくい、指先が動かしづらいなどの人のために、これまでも、ボタンの替わりにファスナー、さらにはベルクロ(商品名としてはマジックテープとして知られています)といった着脱を助けるための道具が開発されてきました。
コートの内側につける取り外し可能な薄手の防寒ベストは、体温調整が難しい人にはもちろん、季節の変わり目には誰にとっても有用です。
背面にかけて縫い目の少ないデザインの衣服は、車いすユーザーには必須ですが、同様に座る時間の長い運転手などにも、肌が擦れなくて良いといえます。
スカートやスラックスのウエストに調整可能なデザインを取り入れると、年齢を問わず着易さが増すでしょう。

<安全性:安全への配慮>                                                災害の発生時に着脱しやすい機能を取り入れることが大切です。
例えば、けがを防ぐためにフード(頭巾)に衝撃吸収材を入れること。
ファスナーは緊急時に上下で開閉可能なものを使用して、着脱が素早くできるようにすること。
また、発生時のみならず、予防の観点も重要であるといえます。
パジャマや浴衣を始め、袖などの着火しやすい箇所には、燃えにくい難燃性素材を使用すること。
夜間の外出時には、反射材を用いた靴や衣類を使用することで事故を予防することは、子ども、学生、高齢者など多様な人にとって有効となります。

<社会性:環境への配慮>                                                 製造や流通、販売の過程において、環境や持続可能性(サスティナビリティ)に配慮しましょう。
オーガニックな素材を育て、用いることで、環境に配慮し、化学物質過敏症の人も利用可能な衣類となります。
また、誰でも使えるアクセシブルな試着室は、車いすやベビーカーユーザー、LGBTQの人にとっても、利用可能なものとなるでしょう。

<視認性:わかりやすさ>
衣類の着脱の方法が、直感的にわかりやすいことは最低条件です。                               どうすれば袖を通せるのか理解に苦しむブラウスや、複雑極まる紐結びの靴などのファッションも存在しますが、それらはUDからほど遠いといえるでしょう。
また、購入時にはサイズや素材、利用時には洗濯の方法などを確認する必要があるため、品質表示、洗濯表示、サイズ表示などの文字やピクトグラムなどの記号は、書体や色使いに配慮しましょう。

今回は理解度を上げるため、「衣のユニバーサルデザイン」をひとつの例としました。
誰もが気にせず利用できるユニバーサルデザインは、現在では私たちが気づかないまま、そこかしこにあるといえます。
私たちの毎日の生活の中に溶け込むユニバーサルデザインですが、私たちのQOL向上には欠くことのできない大切なものであることは否めません。
このブログを書いているうちに、私は大好きなウォーキングの時に、街中にあるユニバーサルデザイン探しをしてみたいと考えています。
都市景観の中や色々なお店の設え、そしてそのお店の数々ある商品の中には、ユニバーサルデザインを基本とした、とてつもない配慮と工夫が隠されていて、それに気づかされる驚きを楽しんでみたいと思うからです。
読者の皆さんも、暑い最中ではありますが、見慣れた街中でユニバーサルデザインを発見してみませんか!(ま)

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