ユダヤのことわざがくれた、自分革命の47章

こんにちは、盲目のセラピスト・亀ちゃんです。
先月は、私が「日本全国47都道府県一人旅」を始めるまでのことを書きました。
今月は、その旅を通して学ばせてもらったお話です。

不安な思いを胸に、最初の旅先・名古屋に向かって近鉄特急に乗りました。
どこの鉄道会社でもそうですが、乗車駅で介助をお願いすると、到着駅に連絡が入り、降りたあとの駅でも親切に介助をしてもらえます。
もうすぐ名古屋、というところまで来たとき、急に「わぁ、どうしよう…」とうろたえてしまいました。
到着駅に着くと、介助の駅員さんが必ず「この先、どちらに行かれますか?」と訊いてくれます。
でも、今回は行く場所が決まっていません。
駅に着き、案の定駅員さんが「この先はどちらに行かれますか? 新幹線か、地下鉄への乗り換えですか?」と尋ねてくれました。
私はとっさに、「この近くに “100円均一ショップ” はないですか?」と聞きました。
駅員さんは少し驚いた様子で、「“100円均一ショップ” ですかぁ? あるかどうかはわかりませんが、多分○○百貨店の中に入っているかもしれませんねぇ」と教えてくれました。
それで私が「じゃあ、その○○百貨店は、どちらの方向ですか?」と、指先を触らせてもらって方角を教えてもらい、その方向に歩き始めました。

しばらく進むと、どこかの壁に突き当たったので、近くの人に「すみませーん、すみませーん」と声をかけ、次の進路を教えてもらいました。
何人かの人に教えてもらいながら、ようやく目的の百貨店に着きました。
店員さんに尋ねると、「ここにはありませんが、□□薬局の中にありますよ」と親切に教えてくれました。
外に出てからも何人かの人に聞きながら、ついに “100円均一ショップ” にたどり着くことができました。
そのとき「あぁ、この先も何とかなるっ」と、この一歩がとても大きな一歩に感じられました。
それからは思いつくまま、郵便局や市役所、名古屋城などを次々に回り、途中で素晴らしい年配のご婦人に出会え、とても親切にしていただき、無事にホテルにも到着できました。
翌日も、そのご婦人がわざわざ来てくださり、町を案内してくださり、ランチもご一緒させていただき、無事に家路につくことができました。
家に帰って、「0を1にできた。これで、もう47都道府県行ける!」と、小さな自信が生まれた瞬間でした。

それからは、会社の休みを利用しながら、47都道府県を巡ることができました。
よく「どこの県が一番良かったですか?」と聞かれます。
私は美味しいものを食べるとか、きれいな景色を見るとか、有名な観光地を訪ねるという目標はまったくなく、ただ『0を1にする』ことが目的でした。
乗り物で言えば、電車、バス、タクシー、新幹線、広島では“ちんちん電車”、長崎ではロープウェイ、四国に行くときは飛行機、長距離バス、帰りはフェリーなど、とにかく新しい乗り物に乗ることで「0を1」にしました。
乗り物だけではありません。
一番記憶に残っているのは岐阜県です。
そこでは温泉の大浴場、食べ物ではお寿司屋さん、ホテルでは朝食のバイキングなど、私にとって大きな「0を1」にできた旅でした。
他にも、松山に向かうときの「飛行機」の体験は、大きな「0を1」の挑戦でした。
前日の夜は、「空港まで行けるだろうか?」「航空会社のカウンターまでどうやって行くのか?」「飛行機の中でトイレに行きたくなったら?」「飛行機を降りてからバスにどうやって乗る?」など、心配があふれて眠れない夜を過ごしました。
でも実際には、まったく問題はありませんでした。
その航空会社のカウンターで親切にしてくださったスタッフの方に尋ねました。
「すごくご親切にしていただき、とても助かるのですが、これが行き先がニューヨークでも同じなんですか?」
するとその方は、「はい、距離は遠いですが、サービスは一緒ですよ」と教えてくれました。
その言葉が、後日の「ニューヨーク一人旅」につながったのだと思います。

このように、場所ごとに新しい体験をし、「すみません」と言い、生涯の心友と呼べるような友達もできました。
ユダヤのことわざに、「0から1までの距離は、1から1000までの距離よりも遠い」という言葉があるそうなのですが、本当にその通りだと実感しました。

話は最初に戻りますが、名古屋で「すみませーん」と言いながら歩いていたときに思ったことがあります。
私は「すみません」を言う練習のために歩いているのですが、街中で助けてくださる方は、ご自分の用事を置いて、私をわざわざ連れて行ってくれるなどして、親切にしてくれる方がとても多かったのです。
私は申し訳ない気持ちになり、「こんなことをして、皆さんに迷惑をかけていいのだろうか…」と罪悪感が沸き起こりました。
それで、「ごめんなさい。今はこうしてご迷惑をおかけしていますが、ここで自信をつけ、どこへでも行けるようになり、将来は必ず社会に恩返しをさせていただきますから、今はすみませんが助けてください」と心に誓いました。
この場を借りて、当時助けてくださったすべての皆様に、心よりお礼を申し上げます。
皆様のおかげで、“すみません”がしっかり言えるようになり、どこにでも行けるようになりました。
一歩ずつ踏み出したその足跡が、私の世界を広げ、心に灯をともしてくれました。
出会ってくださったすべての方へ、本当にありがとうございました。心を込めて、合掌…。