ヤングケアラー支援

さて、今回の話題は、「ヤングケアラー」に関する話題です。

学校では一つの学級に1人から2人いるといわれる「ヤングケアラー」。
しかし、子ども家庭庁の調査によると、全国の自治体のうちヤングケアラーの相談窓口などを整備しているのは約8%となっています。
自治体によって支援に差があるのが現状です。
相談窓口を設置していない自治体においては、全体の職員数削減の流れもあり、専任の職員を置くことが難しいといいます。
こうした現状の中で、国は「ヤングケアラー」への支援を明文化した「子ども・若者育成支援推進法」の改正案を成立させました。
今回の改正法では「ヤングケアラー」が国や自治体が支援に努めるべき対象であると明記され、自治体での支援のばらつきが解消されることが期待されています。

さて、それでは具体的に自治体の動きを見ていきましょう。

大阪府の例で言えば「ヤングケアラー支援」モデル事業として、学習支援をしている八尾市の社会福祉法人が挙げられます。
授業料は無料で、スタッフにも手当があります。
支援の担当者はこうした事業につながることで、学力があがったり、自分の居場所を見つけられたり、支援の成果は感じるものの、まだまだ課題はありますと話されます。
施設の方のお話しでは、子どもだけを支援しても結局のところ親も一緒に支援しないといつまでたっても環境は改善されていかないということを話されます。
親が介護が必要な状態だと、社会の色々な支援制度のネットワークに最良の形で上手く繋がっていかないため、子どもはずっと「ヤングケアラー」、ずっと「ケアラー」の状況を強いられるんですとおっしゃいます。

子どもへの支援だけではなく、多方面でのネットワークを有効に使わなければ、ケアラーから抜け出せないといった現状がそこにはあります。

また一方では、取り組みをしたとしても、支援を拒否する家庭が多いといった現状があります。
専門家は「なるべくハードルの低いサービスから支援を」と助言をしています。
その他、親への支援に取り組んでいる自治体もあります。

全国で最初に「ヤングケアラー」の相談窓口を設置した神戸市では、相談支援課の方で電話相談を受けています。
ただ、多くは関係機関からの相談で、当事者や家族からの相談は2割以下というのが現状となっています。
神戸市では事業を始めてから3年間で404件の相談があり、そのうち196人のヤングケアラーを継続的に支援してきた実績があります。
2年前からは全国で初めてケアの負担を軽減しようと、ホームヘルパーを自宅に派遣する事業も始めましたが、利用は11件と伸び悩んでいるのが現状といいます。
神戸市相談支援課の話としては、支援を拒否している家庭が多い現実があるといいます。
自分たちのことだから、行政には関わってほしくないと拒否をしてしまうので、子どもたちがしんどい思いをしてても親がそれを否定をしてしまうと、なかなか支援につながらないというのがあるということです。
学校、地域、支援団体など、まわりにいる大人をいかに巻き込んでいくかが大事だと専門家は話しています。

NPO法人ふうせんの会代表理事で大阪公立大学教授の濱島淑恵さんのお話しでは、自分の家に他人をあげるというのは大人も子どもも当然ハードルが高いわけです。
兵庫県の場合だとお弁当の宅配を始めてますけど、人が中に入ってくるわけではない、なるべくハードルの低いサービスや支援から始めて、そこで相談窓口とヤングケアラーとご家庭がつながって、信頼関係が築かれていけば、家に入ってくるようなサービスも受け入れやすくなってくると思いますとおっしゃっています。
自分で気がつくのが難しい「ヤングケアラー」。
また、気づいたとしても本人が声をあげにくい「ヤングケアラー」。
周りの大人たちが少しでも早く気づいて、相互の信頼関係を構築しながら、少しずつでも支援を進めていくことが必要だといえます。

私たちQOLジャパンは、年齢、性別、国籍、宗教などに関わりなく、全ての方々が身体的にも精神的にも社会的にも完全に満足のいく状態にあることを目指して活動を続けています。
ただ、このメルマガで触れたヤングケアラーの子どもたちにとっては、自分たちが置かれている今の状況は本来社会が支援を行うべきことだとの理解度が不足しているようにも感じます。
QOLジャパンは、今回の法律改正を契機として、社会全体がもっと「ヤングケアラー」の現状を知り、対処が必要だとの認識を持っていただけるよう、色々な機会を通して引き続き継続性をもって訴えていきたいと考えています。
そして「ヤングケアラー」の子どもたちも、社会のセーフティーネットを知り、現状から脱却して、自らのQOLの向上へ繋げていくものであって欲しいと考えています。(ま)