フレイル予防で、健康寿命の延伸を図ろう!
さて、今回の話題は、高齢者必見の「フレイル」という状態にまつわる話題です。
「足腰が衰えた気がする」
「外に出たがらない」
「何だか落ち込んでいるように見える」
このように、ご家族の様子が変わったと思うことはありませんか?
もしかしたら、その状態はフレイルかもしれません。
今回は、特に高齢者に気をつけてもらいたいフレイルの概要や予防対策についてみていくことにしましょう。
そもそもこのフレイルとは一体何者なのでしょうか?
フレイルとは、年齢に伴って筋力や心身の活力が低下した病態のことで、健康な状態と要介護状態の間の段階を指します。
あまり聞き慣れない言葉かもしれませんが、2014年に日本老年医学会が提唱して以来、介護予防のキーワードとして注目を集めています。
具体的には「足腰の筋力が衰えて、歩くのに杖が必要な状態」というイメージでしょうか。
多くの高齢者は、フレイルを経て要介護状態へ進むと考えられます。
フレイルは「ぜい弱」「虚弱」などを意味する「Frailty(フレイルティ)」が語源になっています。
フレイルは、高齢者が陥りやすい心身の虚弱を多面的に表した概念です。
超高齢化社会が進む中で、今後非常に重要になってくる病態といえます。
フレイルはどの部分が弱っているのかによって、4つのタイプに分けられますので、順番に詳しく見ていきましょう!
最初に、「身体のフレイル」についてです。
「身体のフレイル」には、次のような典型的な特徴がみられます。
・筋力やバランスの低下、関節痛などによって転びやすくなる
・歩くのが遅くなる
・内臓機能の衰えによって、風邪や病気にかかりやすくなる
・体力が低下し、疲れやすくなる
これらは、いわゆる運動器(骨・関節・筋肉・神経など)や内臓などの機能が衰えている状態と言えます。
原因としては、加齢や疾患(関節疾患、生活習慣病など)により、活動量が低下したり、身体の機能が低下することで起こります。
次は、「心のフレイル」です。
このフレイルの特徴は、次のようなものが挙げられます。
・出かけるのがおっくうになる
・物をどこに置いたかわからなくなる
・判断力が低下する
・活気がなくなる
・落ち込む
気分が落ち込んだり、認知機能の低下が起こったりしている状態です。
配偶者や親しい友人などとの死別、加齢による脳機能の衰えなどが原因で起こります。
続いては、「 社会性のフレイル」です。
このフレイルの特徴は、次のようなものが挙げられます。
・部屋に閉じこもる
・孤食(一人で食事する)になる
・人と話す機会が減る
・楽しみや生きがいを失う
社会的に孤立し、対人交流に支障をきたしている状態と言えます。
家族や友人などと関わる機会が減ったり、外出によるイベントへの参加機会が減ったりして、社会とのつながりが薄くなることで起こります。
独り暮らしであることや、経済的に困窮していることなども原因といわれています。
最後は、「オーラル(口)のフレイル」です。
「オーラルフレイル」ってと思われるかも知れませんが、最近では定期的な歯科検診が推奨されているように、歯や口の衰えから起きるフレイルは全身の健康にも深く関与していますので、今後益々注目されていくと思われます。
具体的な特徴は、次のようなことが挙げられます。
・食べる量が減り、栄養が不足して体重が減る
・滑舌が悪くなる
・声量が小さくなる
・食べ物でむせやすくなる
・固い食べ物を避けるようになる
加齢に伴って、あごやのど、舌などの力が衰えることが要因となります。
歯周病による歯の喪失なども関わっています。
日々の生活の中で、自分自身や家族の中の特に高齢者にこういった様子は見られませんでしょうか?
少し家族の様子を観察して、今紹介した4つのフレイルの具体的な特徴や兆候の有無を確認しては如何でしょうか。
では、ここからは、フレイルにならない予防対策について見ていくことにしましょう。
既に糖尿病・高血圧などの生活習慣病や、変形性関節症などの慢性的な疾患をもつ方は、まず主治医の指示に従って症状の悪化を防ぐことが先決となります。
そしてそのうえで、次の4種類の予防対策をバランス良く実践することが大切と言えます。
持病が無い方も、予防対策として頭にいれていただければと思います。
ひとつめは「食事」です。
低栄養になると筋肉や骨の衰え、体力や食欲の低下などにより、身体やオーラル(口)フレイルになりやすくなります。
毎日3食の規則正しい食生活を送ると共に、次の栄養素を意識的に摂りながら、ひとつのものに偏ることなく、バランス良く摂るようにしましょう。
・炭水化物
・タンパク質
・ビタミン
・ミネラル
・カルシウム
・水分
ふたつめは「社会参加」です。
就労やボランティア活動により「誰かのためになっている」という生きがいを感じたり、役割をもったりしましょう。
また、自宅に閉じこもらずに、外に出て人と会うことも大切です。
地域活動への参加や友人と会う機会が少ない方は、移動能力が低下するという研究結果もありますので、外に出て行くことで得られる移動能力向上といった副産物もありますし、是非とも実践していただきたいですね。
具体的には次のようなものが挙げられます。
・地域や自治会の行事
・同世代の方たちとの交流
・家族や友人たちとの外出
こういった社会との関わりを保てるように、交流を続けていきましょう。
みっつめは「運動」です。
歩く機会をもち、筋力の強化や柔軟性の維持を図りましょう。
また、バランス能力を保ち、痛みや転倒を防ぐことが大切です。
高齢になれば、骨粗鬆症になる方が増えますので、一度でも転倒して骨折などのケガをしてしまえば、中々元には戻ってはくれません。
「転ばぬ先の杖」の格言通り、運動で健康体を維持してください。
目的をもたずに歩くことは苦痛かもしれませんので、家族や友人と一緒に、楽しく散歩するとよいでしょうね。
継続することは大変な部分もありますが、フレイルにならないための予防への近道だと考えて、運動や社会交流が継続できるよう努めましょう。
最後は「口腔ケア」です。
食後の歯磨きをしっかりと行うだけでなく、歯科を定期的に受診して歯のメンテナンスをしっかり行うよう心掛けましょう。
歯の健康が失われると食べる機能が低下し、飲み込む力も衰えやすくなります。
また、食べものが飲み込みにくくなると、むせたり、窒息や誤嚥性肺炎などのリスクが高くなります。
おいしく食事をとり、口や身体の機能低下を防げるよう、口腔ケアに取り組みましょう。
以上の4点が予防対策となります。
まとめとなりますが、健康体であれば難なく出来ていたことも、一旦フレイルの域に入ってしまうと、根気がなくなったりして継続ができず、もとの健康体へ戻ることは容易ではなくなります。
読者の皆さんは要介護の状態ではないからまだ大丈夫だろうと安直に考えず、フレイルになれば健康寿命が延ばせなくなると行った危機感を持ちながら、ここで紹介した健康維持のための予防対策を念頭に入れて健康寿命を1年また1年と延ばしていただければ幸いです。
フレイルにならないことは、健康寿命の延伸に直結するとても重要なことだとの認識を持っていただき、well-beingを叶えるため日々の努力を惜しまずに、「継続は力なり」の実践をしていきましょう!(ま)