ファイナンシャル・ウェルビーイングへの夢
さて、今回の話題は「宝船とファイナンシャル・ウェルビーイングへの夢」についてのお話です。
2025年(令和7年)となりました。皆さま、新年あけましておめでとうございます。
新たな気持ちで迎えるお正月は、幾つになっても特別な想いがいたします。
新春最初の話題は、お正月の縁起物でもある「宝船」のイメージを借りて、「ファイナンシャル・ウェルビーイング」をテーマに、QOLを向上させるための考え方と行動について考えてみたいと思います。
「宝船」は皆さんご存知のとおり、七福神を乗せた船が、幸福や繁栄を運んでくるという日本の伝統的な縁起物です。この宝船を夢に見ると一年間幸運が訪れると言われています。
この宝船に代表される象徴的なイメージは、私たちが新しい年に向けて、どのような目標を掲げ、どのように舵を取っていくべきかを教えてくれるヒントにもなります。
皆さんはお金と幸福との関係を考えられたことはございますか?
私たちの生活において、間違いなく「お金」は大変重要な要素のひとつです。
お一人おひとりの価値観の多様化が進み、幸せの尺度も変化して参りましたが、「生活満足度」を高めるためにはお金が必要です。
しかし、私個人の主観的な考えではありますが、単に「たくさんのお金を持つこと」が幸福を保証してくれるわけではありません。
最近になって特に気になっている風潮として、メディアや書籍では「お金」そのものに焦点があたった考え方や、お金至上主義のような「金儲け術」ばかりが語られていることに少々違和感を感じています。
何かおかしい気がします。
なぜなら、最も大事な「将来に向けてこうありたい」という想いが語られず、言ってみれば、宝船の向かう先ではなく、宝船に積んである宝物の量ばかりが注目されているのはいかがなものか、と思うからです。
今年、五年後、十年後などと、将来的にどこに向かいたいか、実現させたい目標や夢に想いをめぐらすことが大事です。
そして、その実現のために必要となるものとして「お金」があるのではないでしょうか。
今回のテーマでもある、経済的な安定と自由を得て、自分にとって大切な人や生活を守りつつ、心地よいつながりの中で新たな体験に挑戦できる状態、安心や満足・幸福感を感じられる状態。ーーこれこそが「ファイナンシャル・ウェルビーイングへの夢」です。
日常生活に例えれば、急な予期せぬ出費があっても対応できる貯蓄があれば、不安が軽減されます。また、自分の価値観に基づいてお金を使うことができれば、満足感や生きがいを感じることができます。
つまり、宝船に乗せるべきものは「収入の多さ」ではなく、「健全なお金の流れ」と「自分にとって価値のある使い方」、そして七福神のような「仲間の存在」です。
金融庁は、ファイナンシャル・ウェルビーイングを「自らの経済状況を管理し、必要な選択をすることにより、現在及び将来にわたって、経済的な観点から一人ひとりが多様な幸せを実現し、安心感を得られている状態」と定義しています。
キーワードは「多様な幸せ」と「安心感」です。
また、米国金融消費者保護局の定義にも「人生を楽しむための選択肢を持てる、財務的自由を持っている状態」という一文があり、個人が経済的な面での安心感を得ることで、より充実した人生を送ることが可能となることを意味しています。
このように見ていくと、QOL(生活の質)とファイナンシャル・ウェルビーイングには相関関係が大いにありそうです。
そこで次は、ファイナンシャル・ウェルビーイングを築くための舵取りについて考えてみましょう。
「宝船」を現実に浮かべ、目的地に向かって漕ぎ出すためにはどうすれば良いのでしょうか。
個人がファイナンシャル・ウェルビーイングを向上させていくには、まずは金融リテラシーの習得が欠かせません。そして、習得した金融リテラシーを活用し、家計において実際の金融行動に踏み出すことがポイントとなります。
日経ヴェリタスの「家計のウェルビーイングを高めよう」という記事に、その手立てを学べるいくつかのお役立ち情報が掲載されていましたので、抜粋して紹介させていただきたいと思います。
この記事は、家計金融の達人が伝授するという趣旨のもので、今回は、三井住友トラスト・資産のミライ研究所の調査結果が掲載されておりました。
個人がファイナンシャル・ウェルビーイングを向上させていくには、どのような取り組みが必要か? それには、
①学ぶ:金融知識を修得する
②把握:自分ごととして 我が家の収支把握やライフデザインに取り組む
③相談:必要に応じて信頼できる専門家に悩みや疑問を投げかけて解消する
④行動:実際に家計管理や資産形成などに取り組む
といった4つのステップをイメージして取り組むと良いようです。
また、2024年1月に全国18歳から69歳の1万人に、ファイナンシャル・ウェルビーイング度の充足状況(FWB度)と年収水準との相関を調査したところ、
・年収が高くなるにつれ、FWB度が高い人の割合が増える傾向がある
ただ一方で、低年収グループでもFWB度が高い人が1割弱存在している
・FWB度の低い人は高い人に比べて、「金融教育を受けたことはない」の
回答割合が多い(金融教育の受講経験がFWB度を左右する)
・高年収グループの中でFWB度が低い人の特徴は、上記の4つの取り組みが
できていない人が多い
・一方で、低年収グループの中でFWB度が高い方の特徴は、上記の4つの取
り組みができている人が多い
といったことなどが分かったそうです。
この調査結果は何となく分かるような気がします。
日本は、欧米に比べて金融教育が大変遅れているようです。
そのような背景からか、学習指導要領の改訂がなされ、2022年4月から学校での「金融教育」が義務化されました。
また、昨年の4月には「(国民)一人ひとりが描くファイナンシャル・ウェルビーイングの実現」をミッションとする金融経済教育推進機構「JーFLEC(ジェイフレック)」が発足しました。
JーFLECは、国民のニーズに応えた金融経済教育の機会を全国的に拡充していくことを目的としていますので、①金融について知りたい、②専門家等による講義を受けたい、③専門家に相談したい、といったニーズに応えてくれます。
一般の方でも安心してアドバイスを受けることができますので、ぜひご活用なさってみてはいかがでしょうか。
以上、家計のウェルビーイングを高める手立てについてご紹介して参りましたが、もちろん、ファイナンシャル・ウェルビーイングを築く道のりは一筋縄ではいきません。
想定外の出費や市場の変動、あるいは家族の意見の食い違いなど、課題に直面することもあるでしょう。しかし、その過程で学べるのは、単なる「お金の知識」以上のものです。
例えば、「本当に自分にとって必要なものは何か」を考える機会が増えるでしょう。また、価値観に基づいてお金を使うという行動は、自分自身を深く知ることにつながります。
お金の扱い方を学ぶことは、人生そのものを豊かにする学びなのです。
できれば、お金を先に考えるのではなく、自分にとって価値ある生き方をどのように実現させていくか?、を先に考えてみてはいかがでしょうか。
新しい年の始まりは、自分自身の「宝船」を描き、それを進めるための絶好のタイミングです。ファイナンシャル・ウェルビーイングを目指すことは、単にお金を増やすことではなく、自分にとって価値のある人生を築くための土台を作ることです。
「宝船とファイナンシャル・ウェルビーイングへの夢」というテーマを通じて、皆さんが新年の目標に少しでもインスピレーションを得られたなら幸いです。
末筆ながら、この一年が、皆さんにとって経済的な安定と、心からの幸福が訪れる年でありますように。一漕ぎずつ舵を取りながら、理想の宝船を目指して進んでいきましょう。
そして、より良いQOLを目指す旅を始めましょう!
本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。(ふ)