タイパってご存知?
さて、今回はタイパという少々聞き慣れない言葉についてです。
タイパとは、タイムパフォーマンス(時間対効果)を意味する略語です。
かけた時間に対する効果、かけた時間に対する満足度がどの程度なのかを表しています。
お金の有効活用のことを考える「コスパ(コストパフォーマンス)」に対し、「タイパ」は時間の有効活用のことを考えます。
例えばタイパを意識した行動例は以下の通りです。
・タイパを感じられない無駄な飲み会に参加することを辞めた
・打ち合わせのタイパを上げるために、事前に質問事項を整理しておく
・趣味のタイパを上げるため、映画を倍速再生にして1時間で観る
このようにプライベートからビジネスまでさまざまなシーンで、タイパを重視する行動が若年Z世代(1990年代中盤から2000年代にかけて生まれた世代)と呼ばれている層を中心に増えています。
では、なぜタイパがトレンドになったのか、その背景を探ってみましょう。
2022年4月に『映画を早送りで観る人たち』が出版されたことをきっかけに、タイパはトレンドワードとなりました。
『映画を早送りで観る人たち』では、Z世代があらゆることにタイパを強く意識していることが紹介されています。
『映画を早送りで観る人たち』では、映画の視聴方法には下記のような方法があるとしています。
・ながら見:別の作業をしながら映像を見る
・倍速視聴:再生速度を倍にして視聴する
・スキップ視聴:興味のないコンテンツを飛ばしながら見る
・ネタバレ視聴:作品を楽しむ前にある程度の内容を把握しておく
SHIBUYA109 lab.(シブヤイチマルキューラボ)の調査では、Z世代の約半数がコンテンツの「倍速視聴」をしており、80%以上が「ながら見」をしていることがわかりました。
Z世代がタイパを意識する要因は2つあります。
Z世代はとにかく観たい映像、観なければならない映像のあふれている環境にいます。
またSNSの普及も合間って、友達との会話についていくために、効率良くコンテンツを観る必要があるといえます。
ひとつめの要因は、映像系サブスクリプションの普及です。
まず、NetflixやAmazon primeなどサブスクと呼ばれている動画配信サービスの普及にあると言えます。
安価で大量の映像作品を観られるようになったことで、Z世代の間で話題になるコンテンツが爆発的に増加しました。
限られた時間の中で多量のコンテンツを視聴する必要があるため、タイパを意識していると考えられます。
ふたつめの要因は、目まぐるしく変化するSNSのトレンドが挙げられます。
SHIBUYA109 lab.(シブヤイチマルキューラボ)の調査では、Z世代の80%以上がSNSを日常的に利用していることが明らかになりました。
SNSでは日単位、時間単位でトレンドがどんどん変化していきます。
友達との会話についていくためには、トレンドをいち早くキャッチし、そのコンテンツを体験しなければなりません。
可処分時間(個人が自由に使える時間)も限られる中で、タイパ良くコンテンツを消化していく必要があるのです。
では、こういったタイパを意識する人の価値観について触れてみましょう。
タイパを意識しているZ世代は、どのような価値観や消費行動をしているのでしょうか。
他の世代にはない、Z世代特有の価値観や消費行動を紹介してみましょう。
○素早くSNSで調べる
インターネットの普及に伴い情報にアクセスしやすくなったことで、わからないことや知らないことがあれば、現地に行って確かめたり、調べたりすることなく、すぐにSNSで調べる傾向にあります。
例えば以下のように、素早くSNSを使用して情報を取得します。
・近くのレストランを探すには、Instagramのレビューを見て決める
・新しいことを学習するとき、YouTube動画を視聴する
・学習したことの復習には、Instagramでシェアされているパワーポイントの資料を使う
○ネタバレ消費を好む
ネタバレ消費とは、事前に内容を調べた上で商品・サービスを利用することです。
Z世代は「時間をムダにしたくない」「最小の労力で最大の成果を得たい」というタイパの意識から、ネタバレ消費を好む傾向にあるようです。
具体例は以下を挙げられます。
・映画の結末をレビューサイトで調べてから映画を観る
・書籍の要約サイトを見てから本を読む
・誕生日に欲しいものを本人に聴いてからプレゼントを買う
「ネタバレをして面白いのか?」との意見もあがりそうですが、当事者としては以下のようにポジティブにとらえています。
・映画の内容を知っていたほうが楽しめる
・内容に納得した上で後悔せず本を購入できる
・本人の満足度が高い誕生日プレゼントを確実に渡せる
事前にネタバレすることで、無駄なお金を支払わずに済むというコスパ面も重視しているともいえるのではないでしょうか。
視点がずれますが、Z世代が好むSNSについて少し触れてみます。
高齢者の方には少し聞き慣れない言葉かも知れませんが、現代の若者が使っている言葉を知ることで、相手の意思や行動が少しでも理解できたり、コミュニケーションが取れる切り口になることもありますので、スルーせずにちょっとご覧いただければと思います。
「タグる」と「タブる」について
「タグる」とは、SNSのハッシュタグを用いて検索をすることです。
Googleで検索することを「ググる」と呼ぶのに対して、SNSの「ハッシュタグ(#)」で検索することを「タグる」と呼びます。
「かわいい」「おしゃれ」などの感情や共感を表すキーワードを使用して、写真から欲しい情報を検索することが可能となります。
一方の「タブる」とは、Instagramの発見タブからユーザーの好む情報を探すことです。
発見タブは、Instagramのホーム画面にある虫眼鏡マークをタップすると表示される画面のことです。
閲覧・コメント・滞在時間から、ユーザーが好きな投稿をレコメンドして(推薦してもらい)表示させます。
ユーザーの好きな情報がすぐに表示されるため、Z世代は情報を「タグる」「タブる」で探しています。
今まで説明を差し上げたZ世代の行動様式は、限られた時間・自分が自由に使える時間の中で、最も効率が良い方法を選んでいるといった、いたって合理的なものであるといえます。
人生100年時代と声高らかに言ったところで、利用可能な時間は間違いなく今までと同様に有限であり、やはり時間の有効利用を考えていくことは大変重要なことには違いありません。
そのため、他の世代の方々も、タイパは若者専用のものであると決めつけないで、皆さんの生活様式の中にタイパの考え方を積極的に取り入れながら、QOLの向上に繋げていくことを考えていく必要があるのではないでしょうか。
先人の方々がおっしゃった「時は金なり!」の言葉が正しく言い得て妙と言えますね!