グリーンスローモビリティ
さて、今回は、「グリーンスローモビリティ」に関する話題です。
ネットで、ヤマハ発動機が推進する「スローモビリティビジネス」という言葉が目に留まったので、興味半分で調べてみました。
ここからは、ヤマハ発動機のHPから抜粋したものと、国の施策と私なりの考えを加味したものとなっています。
「スローモビリティビジネス」は、高齢者をはじめとする交通弱者と呼ばれる方々の移動手段に、また観光客の利用にと、ランドカー(ゴルフ場のカートから派生した多用途自動車)を軸としていわゆるラストワンマイル(物流の最終拠点から顧客に届くまでの「最後の1区間」を指す言葉)に適したサービスの提供にむけた活用が期待されている事業のことです。
これまでヤマハ発動機は、2014年に石川県の輪島商工会議所の要望を受け、既存のゴルフカートをベースにして保安基準に適合するように改良を施して軽自動車のナンバーを取得し、公道を走れるようにしました。
なお、ヤマハ発動機は、国土交通省や経済産業省、全国の自治体が実施する実証調査等を含めて過去50か所以上の実証調査に対して、車両提供等の様々な形での参画をしています。
ヤマハ発動機は、ゴルフカーの部門では、30余年、いわゆる電磁誘導方式による自動運転化技術を磨くとともに、各地の公道での自動運転実験にも積極的に参画して、技術・知見を積み上げてきています。
今後とも、社会課題の解決の一助として、移動手段の提供、また、ランドカーを通じた住民・観光客のコミュニケーションの場の提供といった視点で、さらに技術開発を進めて参りますとしています。
ゴルフ場のカートを公道で利用する発想は、ヤマハ発動機がおっしゃるように、ゴルフカーとしての30余年の実績とその期間における技術の向上を日々行ってこられた結果として成せることで、一朝一夕には成し得なかったことを考えると、「もっと良いものづくりができるだろう!」といった日本人の職人気質を表している典型だと言えるのではないでしょうか。
そしてここからは、前述した社会課題の解決策のひとつとして国土交通省と環境省が中心となって進めている「グリーンスローモビリティ」事業について触れて行きましょう!
高齢化が急速に進む、ここ日本。
昨今、地域住民の方々の移動の確保・社会参画を促すとともに、観光客の方の移動手段の提供といった幅広い用途が期待できる「グリーンスローモビリティ」の活躍の場が明らかになって来ています。
「グリーンスローモビリティ」とは、別名グリスロやGSMとも呼ばれていて、国土交通省と環境省が導入を推進している、時速20km未満で公道を走ることができる電動車を活用した小さな移動サービスで、その車両も含めた総称のことを指します。
導入によって、地域社会が抱える様々な交通課題の解決や、より良いコミュニケーションの提供と低炭素型交通の確立が期待されています。
「グリーンスローモビリティ」とは、その名が示すとおり、『グリーン』『スロー』『モビリティ』の3つを合体した造語です。
まずは『グリーン』
電気自動車の導入により、CO2の排出量を削減し、環境負荷を軽減します。
いわゆる、環境にやさしい事業を表しています。
続いては『スロー』
時速20km未満の制限速度を設け、公道を走ることが出来ます。
低速移動なので事故のリスクを低減でき、安全性の高いモビリティです。
最後に『モビリティ』
小さな移動サービスのため、狭い道路や短距離での移動が得意と言えます。
同じ定員の車両と比べると、小型で乗り降りがしやすいという特徴があります。
それではここからは、「グリーンスローモビリティ」に関する国の施策がどうなっているのか掘り下げていくことにしましょう!
ここからは、国のプレゼンテーション資料から抜粋したものを紹介します。
先ずは、この施策の背景や目的は何かを見ていきます。
この事業は、国土交通省と環境省がタッグを組んで行っています。
⚫ 地域での低炭素型交通の確立が必須ですが、公共交通機関が衰退をしてしまい、マイカーによる交通手段が主流になっている地方部が多い現状があります。
⚫ 低炭素型モビリティである「グリーンスローモビリティ(時速20km未満で 公道を走る4人乗り以上の電動モビリティ)」は、一部地域で無償運送が行われているものの、地域での本格導入が進んでいない現状があります。
⚫ 様々な地域への「グリーンスローモビリティ」の導入を進めることで、マイカー等からの移動手段の転換を促進するとともに、高齢者の移動手段の確保や観光振興など、交通の低炭素化と併せて地域課題の解決を図っていきます。
⚫ 併せて、車両部材としてのCNF(植物繊維由来のバイオマス素材のため環境負荷が小さく、低炭素社会の実現への貢献も期待されている次世代素材)の実証や、IoTを活用したサービスの構築など複数テーマにおける「グリーンスローモビリティ」の導入方法を検証します。
地域での低炭素型交通の確立が必須というところなどは、皆さんもうなずけるところではないでしょうか。
また、高齢化率の高い地方における移動手段として、いわゆる自動車といったものより手軽で安全な乗り物として受け入れられやすい状況にあると言えます。
では、続いては国が示している「グリーンスローモビリティ」の特長をご紹介しましょう。
特長をひと言で言えば「電動で時速20km未満で公道を走ることができる4人乗り以上の モビリティ」となります。
国では国民の皆さんに分かっていただけるよう、5項目の箇条書きで簡単な英単語を使って説明をしています。
①Green:電気自動車 →CO2排出量が少なく、GS(ガソリンスタンド)撤退地域でも運行可
②Slow:時速20km未満、観光に適したスピード
③Safety:比較的安全、高齢者も運転可
④Small:小型なので道幅が狭くても問題ない →狭い道の中山間地・住宅地・離島など今まで公共交通を使えなかった地域で導入可
⑤Open:開放的や対面式のシートで話が弾む →「乗りたい」「乗って楽しい」モビリティ
そして期待される効果としては、以下のようなものが挙げられています。
⚫低炭素な移動手段への転換による、運輸部門におけるCO2排出量の削減が出来ます。
⚫様々な地域における活用方法確立により、多くの地域へ色々な導入方法が波及します。
⚫導入台数の増加による「グリーンスローモビリティ」の価格を低減することが出来ます。
⚫先端技術の活用方法の実証により、より省エネ効果の高い導入方法の確立が図れます。
以上が国の現状分析や導入効果に関することになります。
それでは、国による「グリーンスローモビリティ」の実証調査が5年前から実施されていますので、その中身を見ていくことにしましょう。
この事業の内容は同一ではなく、「グリーンスローモビリティ」のメリットを活かす方法として、自治体の環境や特色を活かした色々な形での事業展開となっている点がユニークです。
例を挙げれば、高低差を抱える高齢化住宅団地における路地ネットワークに活用したり、旅行者・居住者向けマイクロツーリズム(自宅などから1時間~2時間圏内の地元・近隣への宿泊観光や日帰り観光のこと)への利用や、国定公園内の観光拠点を周遊する環境配慮型観光モビリティ利用、アーケード商店街内の利用による買い物難民への対策及び商店街活性化など、多方面での切り口で「グリーンスローモビリティ」利用の実証調査が実施されています。
また、それに伴うデータの蓄積や改善点の洗い出しなども行われています。
これらの実証調査でも分かるように、「グリーンスローモビリティ」は地域のTPOに合致した利用が可能となる柔軟性のあるものなので、特に高齢者のQOLの向上に大いに寄与する素質を持っていることを感じさせます。
実証調査を踏まえ、本格実施に向けた法整備が整えば、高齢者にも優しい移動手段が正式に世に送り出されることになります。
否が応でも、この新たな手段が全ての国民にとってQOLの向上に資することへ繋がっていくことに期待が膨らみます。
今年のQOLジャパンのメルマガは、今回が最終回となります。
いつもご愛読くださいまして、どうもありがとうございました。
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それでは、来年も引き続きQOLジャパンをどうぞよろしくお願いいたします。(ま)