ギグワーカーって?

さて、今回の話題は最近よく目にする「ギグワーカー」のお話しです。

ギグワーカー(Gig worker)は、業務委託契約で働く形態のひとつですが、よく耳にするフリーランスも業務委託契約です。
では、ギグワーカーとフリーランスの違いは、どこが違うのでしょうか。
どのような違いがあるのかみてみましょう。

ギグワーカーとフリーランスでは、請け負う仕事の継続性に違いがあります。
ギグワーカーが請け負うのは、数時間から数日で完了する、ごく短期間の仕事です。
一方フリーランスは、ごく短期の仕事から数か月~数年単位での継続性の高い仕事まで、さまざまなスパンで委託を受ける場合があります。
ギグワーカーが仕事を受注する場合、基本的にはWeb上のプラットフォームを利用します。
仕事を依頼する企業とギグワーカーのやり取りはオンラインで行われ、両者が直接顔を合わせることはありません。
しかし、フリーランスはインターネットに加え、人脈や営業で直接仕事を受ける場合もあります。
ギグワーカーが請け負う仕事は、基本的に難易度が低いものが多い傾向にあります。
単発での依頼が基本であるギグワーカーの仕事は、同一の仕事でも毎回依頼先が異なるケースも少なくありません。
そのため業務に関する説明の手間を極力省くため、専門知識や高いスキルが必要ないものが中心に割り振られます。
フリーランスの場合、請け負う仕事の難易度は低いものから高いものまでさまざまです。
とくに企業側にノウハウのない仕事を受注する場合は、専門的な知識が必要とされるケースもあります。

具体的な業務内容ですが、ウーバーイーツをはじめとする料理宅配サービスの配達員のほか、最近注目されてきたライドシェアの運転手、この他にもWebデザイン、ライティング、軽貨物の配達や家事代行など、現在ではさまざまな場所でギグワーカーが活躍するようになっています。

では、ギグワーカーが出て来た背景についてみてみましょう。

ひとつめは、「副業の解禁」です。
ギグワーカーが広まった背景に働き方改革があります。
2017年3月に閣議決定された「働き方改革実行計画」により、副業を含む柔軟な働き方を実現するための環境整備が目標に掲げられ、大手企業を中心に副業が認められるようになりました。
さらに2018年1月には厚生労働省が「副業・兼業の促進に関するガイドライン」を作成し、2020年9月と2022年7月に改定されました。
このガイドラインには国として副業を促進することが明記されています。
こうした社会情勢の変化もあり、現在、空き時間を利用してギグワーカーとして活躍する人が増加しています。

ふたつめは、「雇用への不安」です。
2020年ごろから続く新型コロナウイルス感染拡大による雇用への不安も、ギグワーカー普及の追い風となっています。
新型コロナウイルス感染拡大による世界的な労働環境の悪化から、雇用される人の多くは休職や給与ダウンを余儀なくされました。
その結果「ひとつの収入源だけに依存するのは不安」「今のままでは生活が成り立たない」と感じ、危機感を持った労働者が、ギグワーカーを始めるきっかけとなったと考えられます。
また、企業側も企業活動の低迷から、雇用人数を減らし、新たな採用も見送らざるを得ない状況に陥りました。
そのため、必要なときに必要なだけの仕事を依頼できるギグワーカーは、企業の戦力として重宝されています。

みっつめは、「プラットフォームの普及」です。
ギグワーカーと企業をつなぐ役割を担うプラットフォームの普及も、ギグワーカーが広まってきた要因のひとつです。
エンジニアやクリエイター、接客・サービス、ポスティングなどさまざまな仕事を扱うプラットフォームがあります。
とくにフードデリバリー業界でのその普及は著しく、「Uber Eats(ウーバーイーツ)」や「出前館」といったサービスはすでに日常に浸透しつつあると言っても過言ではありません。
それに伴い配達員の数も増加しており、正確な数字は発表されていないものの、現在業界全体では20万人を超えるとされています。

それではここからは、ギグワーカーに仕事を依頼する企業側としてのメリット・デメリットと、ギグワーカーとして働く労働者側としてのメリット・デメリットに関して深掘りしてみましょう。

ギグワーカーに仕事を依頼する企業のメリットは、

  1. 雇用手続きが簡略化され、スムーズに仕事を開始できる
  2. 通常の雇用と比べて採用コストを抑えられる
    の2つです。
    特定の企業に所属しないギグワーカーは、基本的に発注元企業との間で雇用契約を結びません。
    企業視点に立つと仕事開始までの手続きを簡略化できるので、急ぎの仕事や単発で人材を確保したいときにも頼りになる存在です。
    また、ギグワーカーは「短期契約・単発労働」が特徴で、賃金も比較的低い水準に抑えられるため、採用コストを削減できるメリットがあります。

続いて、ギグワーカーに仕事を依頼する際の企業のデメリットは、

  1. 優秀な人材を確保し続けられるとは限らない
  2. 短期契約であるため社内にノウハウが蓄積されない
  3. ルール策定などの対策をしないと情報漏洩リスクがある
    の3つです。
    ギグワーカーは自分の意思で自由に仕事を選べるため、特定の企業でのみ働き続けるとは限りません。
    したがって、優秀な人材と出会ってもつなぎとめるのは難しい側面があります。
    また、短期契約であるがゆえに、社内にノウハウが蓄積しにくいことも懸念材料です。
    企業はインターネット上のプラットフォームを利用してギグワーカーを雇うことになりますが、「仕事の質が求めているレベルに達していない」などのミスマッチが起こる可能性も指摘されています。

それではここからは、ギグワーカーとして働くメリット3つをご紹介しましょう。

  1. 自分の意思で仕事を選べるため場所と時間の融通がきく
  2. 短期契約、単発労働のため人間関係の負荷が少ない
  3. 自分の能力、スキルを磨くことで収入を増やせる
    といったところになります。
    ギグワーカーは特定の企業に所属するわけではないため、サラリーマンのように時間や場所の縛りがありません。
    また、職場の人間関係で悩んだ場合、次からは別の企業と契約を結ぶことで、人間関係のストレスからも解放されます。
    さらに、自分のスキルを磨けば発注先企業から貴重な人材として評価され、収入の増加を期待できます。

一方で、ギグワーカーとして働くデメリットは、主に次の2つです。

  1. 短期契約、単発労働のため収入が不安定になりがち
  2. サラリーマンと違い、現状では保障制度が十分でない
    前述したとおり、ギグワーカーは「短期契約・単発労働」が特徴です。
    サラリーマンのように毎月ほぼ決まった額の給与を受け取れるわけではないため、収入が不安定になりがちです。
    また、現状ではギグワーカーに対する保障制度が十分ではありません。
    社会保険や福利厚生を受けられないケースが一般的で、保険料も全額自己負担となります。

まとめとして、働き方の多様化による具体例として出て来たギグワーカーですが、ギグワーカーは自分の意思で自由に仕事を選べるため、働く場所と時間の融通がきく点が大きな魅力です。
また、企業からみても「通常の雇用と比較して採用コストを抑えられる」などのメリットがあります。
今までやってきたサラリーマンとしての仕事ではなく、自由度の多い働き方として、第2の人生を目指す高齢者にとっても、退職後にやりたかったこととパラレルで進めていくことが可能となるでしょう。
金銭的に多くは望めないものの、年金とは別の収入にもなりますので、ある程度家計の足しにもなるのではないでしょうか。
未経験から始められる仕事も多いので、ぜひ興味のあるもの、ご自分のスキルなどに照らして無理のない範囲でこれはというものを選択していただき、チャレンジしてみてはいかがでしょうか。(ま)